日本と欧州のサッカースタジアム

~スタジアム後進国の改善点~

32組31番 原 壮史

【目的】

 2002年、日本はFIFAワールドカップを開催した。清水章之、小場瀬令二(2006)は「今後もスタジアム整備が増加してゆく中で、地域の実情に応じた適正な規模のスタジアム整備を行うことは行財政の適切な運用と言った観点からも重要であると考えられる」と論じている。このように、地域の実情に応じた適正な規模のスタジアム整備が必要であることは論じられてきた。しかしながら、国という単位での適正規模のスタジアム整備の必要性はこれまで採り上げられることはなかった。本研究では、地域という視点ではなく、日本という観点から考察することを、明らかにすべき課題として設定した。

【各章の概要】

第1章 地方の、クラブチームを抱えていない巨大スタジアム
 日本では、2002年のFIFAワールドカップ開催に向けて、多くのスタジアムが整備された。プロリーグが1993年に開幕したことも加味して、日本のサッカースタジアムの歴史は浅い。そして、2002年のために整備されたスタジアムが、現在の日本の主要スタジアムである。しかしその中には現在問題を抱えているものがある。宮城スタジアムや静岡スタジアムは、Jリーグ所属チームがメインホームスタジアムとしていない。そのスタジアムでの開催意義も失われつつあり、それには立地が大きく影響している。公共交通機関を活用するべきだ。

第2章 入場者が多いスタジアム
 埼玉スタジアムは、現在Jリーグで最高の集客力を誇る。その陰には、公共交通機関の充実がある。
欧州に目を向けると、スタジアムの人捌けの良さが目立つ。例えば、スペイン・バルセロナのカンプ・ノウでは、約8万人を集めた試合でも、試合終了後30分程でスタジアム周辺は静まり返る。これも、公共交通機関の充実が成せる業だ。
 そして立地に加え、適正なキャパシティ、専用スタジアム、複合施設の隣接ということを実現している蘇我球技場を、今後日本のスタジアムが目指すべき形であるとした。

【結論】

 日本は中心部に巨大な施設を作ることは容易ではない。そういう点で、郊外に、という動きは間違いではない。欧州でも改修されて、規模が拡大すると郊外化する傾向が見られる。設備の面で、サッカー先進国を手本にし、追いつこうとすることも、否定することは出来ない。しかし、現実にも目を向ける必要がある。
 また、スタジアムの発展には、生活、文化の中で、サッカーそのものの地位が向上する必要がある。そのためにも、日本代表には2010年、南アフリカで2006年のような惨敗をしてほしくない。

【主な参考文献】

・清水章之、小場瀬令二(2006)『Jリーグスタジアムの整備と利用状況に関する基礎的調査』社団法人日本建築学会学術講演梗概集. E-1, 建築計画I, 各種建物・地域施設, 設計方法, 構法計画, 人間工学, 計画基礎2006
・坪井善道、廣田篤彦、南雲晃央(1998)『大規模スポーツ施設の立地状況に関する研究:施設アンケート調査・集計結果について』日本建築学会研究報告集69号
・John Bale(1997)『サッカースタジアムと都市』(池田勝、土肥隆、高見彰訳)体育施設出版