カシアス・クレイ

~アメリカと戦った偉大なボクサー~

15組15番 工藤 隆文

【目的】

 私は高校時代からボクシングを始め、大学4年の春まで、現役選手としてボクシングを続けてきた。本論文ではその集大成としてベトナム戦争で兵役拒否したボクサー「カシアス・クレイ(モハメド・アリ)」について研究していく。本論文では主に彼の生涯について論じていき、彼の幼少時代、兵役拒否に至った経緯を年代ごとにまとめていく。さらに彼に関わった宗教や彼の信念について深く追求し、現在の彼を作り上げたものは何なのかを考えていく。

【本論の概要】

 1942年、ルーイビルでカシアス・クレイは生まれる。クレイは12歳の時、自転車を盗まれたことからボクシングを始めることになる。クレイはその後、ローマオリンピックで金メダルを獲得、プロデビュー果たし、無敗のまま世界ヘビー級チャンピオンとなる。
 クレイはヘビー級王座獲得後、自分はNation Of Islam(NOI)という組織の一員であることを公表した。NOIはイスラム教から派生した新宗教であり、白人社会との同化を拒んだ組織である。この公表と同時にクレイは自らの名を「モハメド・アリ」に変えた。これによりアリは白人や新聞社から非難されるようになる。
 1966年、ベトナム戦争の激化に伴い、アリも徴兵されることになったが、彼はこれを拒否した。政府はアリの王座を剥奪し、プロ資格まで奪った。彼は職を失うことになったがそれでもアリは政府と戦った。アリは兵役拒否で4年間ボクシングの資格を失った。
 プロ資格を取り戻したアリは現役復帰するが、全盛期に誇っていた脚はすでに衰えていた。ジョー・フレージャー、ケン・ノートンに負けたアリはそれでも王座奪還を誓い、1974年ついにジョージ・フォアマンから王座を奪還する。
 王座奪還後、アリの人生は大きく変わり、人々は彼を讃えた。またNOIも大きく変わった。白人との同化を拒んできたNOIは肌の色は善悪を見極める中で重要でないことを示し、アリはそれに従うようになった。その後、彼はパーキンソン症候群という難病と闘い、現在も世界平和を訴えている。

【結論】

 カシアス・クレイ(モハメド・アリ)は多くの困難と闘いながらも自分を貫いた。それは主に彼の信仰した宗教に影響している。彼のベトナム戦争での行動はアメリカ国民に兵役拒否という選択肢を与えた。彼はどんな罰を受けようと自分の信念だけは曲げなかった。彼の偉大さはまさにそこにあると考える。彼は今も難病と闘いながら生きているが、それでも平和を訴え続けていくだろう。

【主要参考文献】

・トマス・ハウザー「モハメド・アリその生と時代(1993)」東京書籍
・チャールズ・レマート「アイロニーの時代のトリックスターモハメド・アリ(2007)」新曜社
・マイク・マークシー「モハメド・アリとその時代―グローバル・ヒーローの肖像(2001)」未来社
・デイビッド・レムニック「モハメド・アリ その闘いのすべて(2001)」ティビーエス・ブリタニカ