マスメディアにおける水着問題

~水着騒動の問題点を解説する~

27組39番 渡邉 百

【目的】

 本稿は2008年の夏季オリンピック北京大会前に日本のメディアで話題となった、水着騒動の本質となる問題点を整理し、分かりやすくまとめることを目的としている。また、1956年の夏季オリンピックメルボルン大会から北京大会に至るまでの競泳水着の変遷についても解説する。

【各章の概要】

第一章 競泳水着の発展史
 1956年の夏季オリンピックメルボルン大会において、日本の競泳選手が着用した水着は絹製であった。1964年の東京大会では絹より水着に適したナイロン製の水着が登場した。その後様々な改良が施されたが、1990年代前半までは水着の表面積を減らすことに重点が置かれた。
しかし、1990年代後半からは、水中に露出した肌の波打ちによって抵抗が増えるとの認識が高まり、全身を広く覆うタイプの水着が登場した。2000年のシドニー大会でメダル獲得の6割強に関わり、一躍話題をさらったサメ肌水着も全身を覆うタイプで、表面に細かな突起状の加工が施されており、水流を味方につける。
 レーザー・レーサー(以下LZRと表記)は締め付けにより選手の体型を変え、断面積を小さくすることで水の抵抗を減らす仕組みになっている。

第二章 メディア報道にみるLZRの言説
 水着問題は『FINAの競泳水着規約変更と、LZR認可に関する妥当性の問題』と『日本水泳連盟と国内三社の契約問題』と『競泳選手とスポンサーとの個人契約の問題』に大別される。

【結論】

 今回の騒動はスポーツの商業化が進んだ結果として起きたものである。競泳はマシンの性能も競うモータースポーツなどとは違い、水着の性能ではなく、選手の能力を競い合うスポーツのはずだ。FINAは競泳が真に人間の能力を競うスポーツとして在るように、各規約について慎重かつ公平な決定を下してほしい。

【主な資料】

1二宮 清純(2008/8)『スポーツ・ラジカル派宣言(187)北島康介「高速水着(レーザー・レーサー)で金メダル」の可能性』学習院 現代 42(8) 講談社 pp.174〜180
2化学経済  47(11) pp.60-63 2000/9『競泳用水着を化学する--発想の転換から生まれたサメ肌水着』化学工業日報社