デットマール・クラマー、イビチャ・オシム考察

~二人の言葉から共通性を探る~

6組33番 吉田 紘文

【目的】

 言葉は時として人に多大な影響を与えるものである。発する人によって、その影響は様々であるが、人を惹きつける魅力のある人物が発した言葉は格言へと昇華される。
 かつて日本サッカー界に、格言を数多く残した二人の名指導者が存在した。1960年代に、弱小と言われたサッカー日本代表を夏季オリンピック東京大会(以下オリンピック東京大会)でベスト8にまで導いたデットマール・クラマー(以下クラマー)と、成績が低迷していたJリーグチーム・ジェフ市原を強豪チームへと変貌させたイビチャ・オシム(以下オシム)である。
 二人の格言は有名であるが、それらを繋げた研究は管見した限り見当たらない。そこで、本研究では、彼らの言葉に注目して、共通点、相違点を見出し、考察することを目的とする。

【各章の概要】

第1章 二人の生涯
 二人がどのような生涯を送ったのか調べ、選手時代、来日以前、来日時、来日後と三段階に分け二人の経緯を出来る限り詳しく見てみた。それによりどの様経験をし、影響を受けたのかを調べた。

第2章 類似点
 文献を分析した結果、言葉を巧みに操り選手をマインドコントロールする点以外にもコーチングやシステム論などに類似点が見られることに気づいた。例えば、サッカーのために寝食を削り、揺るぎない理論を持ち、厳格を貫く一方で暖かみを内包している点。自分の価値観に合い、頑張っている人を常に試合に出場させてコミュニティ作りをする点などがこれにあたる。

第3章 語録から見えるもの
 私はクラマー、オシムに見る語録を細分化する事で惹きつける魅力を解明できるのではないかと考えた。そしてさまざまな文献を読み私は彼らには原則がある事に気付いた。それは「5つの原則」である。そしてここから私は、二人の人を惹きつける魅力を解明することが出来た。

第4章 考察
 私は人気と人望は今まで同じ意味を持つと考えていた。しかし、二人の研究をするにつれ違うことに気付いた。今まで二人の研究をし様々な考察をする中で私は二人は人気者ではなく、人望の人なのだと考えた。そして人望とは畏敬なのであると私は考える。畏敬とは人を遠ざけるものではなく、どんなに怖くて煙たく感じても、いざとなったら頼りにする。一目置いたり、そこにいるだけで安心する。そのような彼ら二人に畏敬の念を込め選手たちは慕い、それに応えるよう二人も接した。さらに5つの原則から考えても彼らはコーチや監督らしくない。彼らはまるで人の気持ちや、どのようにやれば伸びるかなど全てを熟知した優秀な教師であると私は考える。だからこそこれだけの人を尊敬させ畏敬の人として扱われるのであろう。そのような二人が残したから語録として語り継がれるのであると考えた。

【主な資料】

・加部究(2008) 大和魂のモダンサッカー
・原島由美子(2007) オシムがまだ語ってないこと
・中島孝志(2007) なぜオシム語は人を惹きつけるのか?