古代ギリシアにおけるオリンピア祭典競技
-宗教的儀式としての古代オリンピック-

8組3番 板倉 彩乃

【序論(目的)】

 私は大学3年次に受講したスポーツ文化論をきっかけに、スポーツと宗教の関係について興味を持つようになった。その中でも特にスポーツ競技の祭典としての側面と、ゼウス神の信仰心から成る宗教的儀式としての側面を併せ持つ古代オリンピックについて深く研究しようと考えた。本研究では古代ギリシアや西洋文明の歴史を色濃く反映させている古代オリンピックに焦点を当てて、その宗教的儀式としての意義やエンターテイメント性について研究することを目的とする。

【各章の概要】

第1章 古代オリンピックの歴史
 古代オリンピックの由来から滅亡までの歴史について触れる。全知全能の神ゼウスを祀るオリンピア祭が、後世に古代オリンピックと呼ばれるようになった。紀元前728年第13回大会まで会期は1日だけ、スタディオン走のみが行われていたが、紀元前472年第77回大会から競技種目と参加者が増加したので、会期は5日18の競技種目になった。優勝者や出身ポリスに与えられる名誉と富は職業競技者を発生させ、競技者同士の買収や審判員への賄賂などの不正行為が横行した。競技者のモラルの低下とローマ人の介入によりオリンピアの祭典は衰退を始めた。392年にキリスト教をローマ帝国の国教と定め、すべての異教祭を禁止したことでゼウスに捧げるオリンピア祭も禁止され開催不可能になり、393年第293回が最後の大会となった。

第2章 古代オリンピックの競技
 主な競技種目を紹介する。4頭立て戦車競技(テトリッポン)は戦争の際に兵士達が使う戦車をアレンジし用いた競技である。ペンタスロンは、短距離、幅跳び、円盤投げ、槍投げ、レスリングの5種目を一人で行う競技である。パンクラティオンは身体のあらゆる部位、手、足、肘、腕、頭を使い、相手のあらゆる部分を攻撃する競技である。ラッパ競争はラッパを使用して、通告競技は大きな声で遠く離れた場所に正確に連絡することを競う競技である。この他にも最多で18種目の競技が会期5日間の間に行われていた。

第3章 知られざる古代オリンピック
 古代オリンピックのスポーツ以外の側面について触れる。宗教儀式、芸術家や哲学者たちの目論見や優勝者への付加価値など、知られざる古代オリンピックについて明らかにする。

【結論】

 古代オリンピックが古代ギリシア人にこれほどまでに愛された理由は3つあるように思う。まず1つ目は、古代ギリシア人がスポーツを愛していたということ。2つ目は、古代ギリシア人の神に対する忠実な信仰心。3つ目は、優勝者に与えられるオリーブの冠以上の付加価値である。古代オリンピックは、古代ギリシア人の闘争心や信仰心、欲望などが合間った非常に人間くさい、人間味溢れたエンターテインメントの世界であったといえよう。

【主要参考文献】

1)『驚異の古代オリンピック』トニー・テロペット 矢羽野 薫=訳 河出書房親書 2004年7月
2)『オリンピア祭-古代オリンピック-』堀口 正弘 近代文芸親書 2005年5月
3)『古代オリンピック』桜井 万里子/橋場 弦 編 岩波新書2004年7月