スポーツ事故とその責任

32組22番 丹羽 由里加

【序論(目的)】

 スポーツは危険が付き物とされているため、事故が起きた際の責任の追及が難しいとされている。しかし現実には事故は起こり責任問題が発生している。よって、本論文は、実際にスポーツ事故が起きた際に、どのように責任が追及されるのかを明らかにすると同時に、スポーツ事故を未然に防ぐための策を考えることをテーマとする。

【各章の概要】

第1章 スポーツ事故と法的責任
 スポーツを楽しむ人が増えると同時に、スポーツにおける事故の発生件数も増加している。そしてまた、事故の責任を追及する動きも活発になっている。今日の日本においては、事故発生時の指導者の安全配慮や施設や用具の管理状況、あるいは、事故に県や市といった行政機関が関わっているかどうかにより、事故の責任追及を「民事責任」、「刑事責任」、「行政責任」の3つに分けて行っている。

第2章 学校生活でのスポーツ事故とその責任
 学校生活の中で起こるスポーツ事故の態様として相当数を占めているのが、体育での事故である。体育事故が起きた際、その責任を問うために、一番注目される点は、指導者(教師)の、生徒の生命・身体の安全に対する注意義務である。しかし、体育事故において、指導者(教師)の注意義務違反を認定し、被害者が、指導者や学校を相手取って損害賠償責任を問うことは容易ではない。これには、教師の注意義務に対する考え方について、「親の監督義務の代行形態とみる第一説」、「教育的な安全注意義務と捉える第二説」、「学校教育上の義務と解する第三説」、「義務の根拠づけを明らかにしない第四説」、といったように、様々な学説が存在していることや、学校体育が教育の一環であるために、公的機関(県や市など)が関わってくることが大きく関係している。よって、学校体育での事故は、それ以外のスポーツ事故の責任問題よりも非常に難しくナーバスな問題であるとされている。

第3章 スポーツ事故発生の防止と指導者
 指導者は、スポーツ事故を防ぐために、用具・施設の管理や環境への対応が求められる「安全の管理」と、指導対象者の特徴や種目特性に応じた指導プログラムの立案と実践が求められる「適切な指導」を行う必要がある。また、スポーツ活動は必然的に事故発生の危険性をはらむものであるため、指導者及びスポーツ活動参加者の双方に、スポーツ保険加入を奨励することも、スポーツ事故の発生を防ぐための防止策の1つであると言える。

【結論】

 スポーツをする以上危険は付き物である。しかし、「スポーツと危険は隣り合わせである」という意識を持ってスポーツをすることで、スポーツ事故を最小限に抑えることは可能であろう。スポーツ事故を防ぐために、「指導者として保護者として求められること、スポーツをする人として意識すべきこと」を理解してスポーツ事故の発生を防ぐために最大限の努力をし、事故を最小限に抑えることができた時、そこにスポーツの最大の楽しみが生まれてくるのではないだろうか。よって私は、本論文を通して、「スポーツと危険は隣り合わせである」という意識を持ってスポーツをすることこそが、スポーツ事故を防止するための最大で最強の策であると主張したい。これはきっと非常に単純だが非常に難しい防止策である。しかし「意識をする」ということは、スポーツ事故を防ぐ一番の近道である、と私は考え、これを本論文の結論とする。

【主要参考文献】

・スポーツのリスクマネジメント 小笠原正、諏訪伸夫編集 株式会社ぎょうせい 2009年
・スポーツ事故の総合的研究-事故の判決例をめぐって 三浦嘉久 不味堂出版 1995年
・体育と法:体育事故と法的責任 伊藤尭 道和書院 1969年