球団経営としてのプロ野球

-東北楽天ゴールデンイーグルスを中心に-

5組23番 中鉢 亮太

【目的】

 球団経営としてプロ野球を見た場合、その現状はテレビで試合を見るだけではなかなか知ることはできない。第1章では、プロ野球球団設立の規定要因と、新規参入に揺れた2004年の歴史を探る。第2章では、2005年のペナントレースより新規参入を果たした東北楽天ゴールデンイーグルス(以下、楽天)を中心に球団経営の実態を検討していく。楽天を中心に考える意義は、東京読売巨人軍(以下、巨人)をはじめとする球団経営の現状と、新規参入の球団経営を比較対象にしやすいと考えたからである。プロ野球界における課題を明らかにし、球団経営の側面について多角的に知ることができる基礎資料とすることを目的とする。

【各章の概要】

第1章 プロ野球の歴史
 戦前における日本のプロ野球の成立には、心理的要因と、社会的要因が必要であった。心理的要因としては、従来の野球を支えてきた武士道的精神による金銭拒否の名誉感(入場料徴収など)を克服することであった。社会的要因としては、経済的発展の影響により野球を興業化することによって、直接的、間接的に利益を生じる企業(新聞社、鉄道会社)が野球を利用することであった。この2つの要因により、プロ野球は成立しえた。
 新規参入に揺れた2004年は、近鉄バファローズ・オリックスブルーウェーブ合併問題を契機とし、日本プロ野球初のストライキでの試合中止、ソフトバンクによるダイエー球団買収、そして楽天の新規参入により、まさに球界再編の1年となった。それは、ただ単に1リーグ制、2リーグ制だけの問題ではなく、フリーエージェント(FA)制度の在り方、自由獲得枠によるドラフトでの不正献金、NPBと選手会の関係など、様々な問題点が浮き彫りになった。しかし、
 くしくも球界再編は、パシフィックリーグ人気の火つけとなり、セ・パ交流戦やクライマックスシリーズ導入などのファンを引き付ける新たな制度も作られるきっかけとなったのである。

第2章 球団経営
 球団経営の現状は、50年以上前から、球団経営については広告宣伝費として処理できるため、赤字でもいいという考えがまかり通っていた。一方、楽天は2005年シーズンにおいて97敗を喫したものの、球団経営の面では黒字であった。それは楽天の球場運営に対する戦略が大きく影響していた。
従来のスタジアムについては、どの球場も基本的に東京ドームの営業形態を踏襲していた。つまり、球団と球場は、直接的に資本関係はなく別の会社として扱われているため、看板広告宣伝費などは全く球団には入らないシステムとなっている。
 一方、楽天の場合、球場の使用権と営業権を手に入れたことにより、球団の管理と球場の運営を含め全て行った。そのため、球場の看板広告宣伝費などが、そのまま球団に入ってくるシステムとなっている。その上、インターネットのHPからスポンサーを募り、楽天とスポンサーとなる企業とWIN-WINの関係を築くことで、全国、地元企業から幅広くスポンサーが付いているので、安定した収入が得られる。放映権については、野球界では、巨人戦は最大の放映権収入となっていた。楽天も例外ではなく、交流戦での巨人戦は、全国放送の場合1試合1億円で3億円の収入が見込まれたため、最大の収入源となった。

【結論】

 この研究を通して、2004年の動きでもわかるように、野球界は個々の球団が試合にしかり経営にしかり、ただ勝つことだけを目的とした運営では成り立たない業界であることがわかった。野球界は球界再編の歴史を踏まえたうえで、例えば、放映権収入をホームチームだけでなく、ビジターチームにも配分するなど、12球団が運命共同体として利益を産む努力をしていく必要がある。

【主要参考文献・引用文献】

1、菊幸一 「近代プロ・スポーツ」の歴史社会学-日本プロ野球の成立を中心に- 1993年 不昧堂出版
2、日本プロ野球選手会 勝者も敗者もなく2004年日本プロ野球選手会の103日 2005年 ぴあ株式会社
3、田崎健太 楽天が巨人に勝つ日-スポーツビジネス下剋上- 2008年 株式会社学習研究社