1964年東京オリンピックが日本社会に及ぼした影響
~経済への影響を中心に~
23組14番 菊田 唯人
【目的】
日本は東京オリンピックを第二次世界大戦後の荒廃から復興したことを世界中にアピールし、再び主要先進国として国際社会に復帰するための国家プロジェクトとして位置付けていた。そのための社会基盤づくりとして東海道新幹線建設やオリンピック道路建設、地下鉄建設など総額1兆円以上を投じて首都東京を大きく変貌させた。もはや、東京オリンピックは日本経済史を語る上で欠かすことのできない出来事である。
本研究は、1964年東京オリンピックが日本社会に及ぼした影響について言及することを目的とする。
【内容】
第1章 東京オリンピック開催の経緯と概要
東京都は首都東京が次第に失いつつある都市機能の欠陥を回復させ充実させることをオリンピックの一つの目標としていた。当時、東京は人口と産業の集中という問題を抱えていた。そのため、激しい交通渋滞や上下水道問題、住宅問題などの都市問題の解決をする必要があった。こうした問題を抱えた東京都にとって、オリンピックによる都市整備計画は状況改善の起死回生のチャンスであったのだ。
第2章 東京オリンピックのインフラ整備
東京オリンピックでは、当時、競技会場としてそのまま使える施設がほとんどなかった。このため早急に各種の競技施設を新設することがせまられた。東京をはじめ、神奈川や埼玉、長野の1都3県に広がる競技施設の新設、改修、整備が行われた。大観衆が予想されるために競技施設はなるべく交通の便のよい23区内が望まれた。
メイン会場となった明治公園の国立霞ヶ丘競技場は、大会の開・閉会式場および陸上競技の主会場となったが、従来の規模をほぼ倍増して、7万5千人収容のメインスタジアムとして改修された。
第3章 東京オリンピックと高度経済成長
日本の高度経済成長期は昭和30年代から10数年である。東京オリンピックはその真っ只中で行われた。それは、オリンピックを開催するだけの力が日本に生まれてきたことの証であった。そして、オリンピック開催と同年の1964年にIMF8条国に移行、OECDにも加盟したことで世界の国々から一人前として認められたのだった。
【結論】
東海道新幹線建設や首都高速道路建設などに挙げられる約1兆円のオリンピック関連公共投資は高度経済成長を押し上げただけでなく、我が国の経済や社会を様変わりさせる要因として作用したといっても過言ではない。もし、東京オリンピックが実現していなければ、日本経済や東京の都市機能の発展はもう少し遅れていたことであろう。
【主要参考・引用文献】
・清水諭『オリンピックスタディーズ』せりか書房(2002)
・東京百年史編集委員会『東京百年史 第6巻』株式会社帝国地方行政学会(1972)