ヨーロッパ・サッカー界の民族差別

~ナチス政権によるユダヤ人差別を中心に~

26組3番 石毛良樹

【目的】

 近年、ヨーロッパ・サッカー界における人種差別が話題となっているが、サッカー界における差別問題は最近に限った問題ではない。サッカー界の歴史を振り返ると、過去にも同じような差別が存在した。それがナチス政権のユダヤ人差別である。
 私は、世界最大規模と言われるこのスポーツの過去の歴史とその背景を知りたいと思った。また、本論文の読み手に対して、過去のサッカー界の陰の歴史やナチス政権、ユダヤ人差別などに関して理解を深めてもらいたい。これらが本論文の目的である。

【概要】

序論 人種と民族
 執筆にあたり、ユダヤ人を人種として扱う文献と民族として扱う文献が混在していた。本論文では人種を生物学的・肉体的な違い(皮膚の色など)を基準に分類した人間の集団と定義し、人種の分類は白人、黒人、その他有色人(黄色人など)とした。一方、民族は文化的・心理的な違い(宗教、祖先など)を基準に分類した人間の集団と定義した。
 上記の定義から、本論文ではユダヤ人を民族として扱った。

第1章 ユダヤ人という民族とその歴史
 ユダヤ人とはどのような民族かという問いに、一言で答えることは極めて難しい。基本的には、ユダヤ教を信仰する者、ユダヤ人を親に持つ者という2つの捉え方が存在する。また、ユダヤ人は歴史上様々な理由から迫害を受け続けた民族でもある。ナチス政権も同様にユダヤ人を差別した。その最大の理由は、ナチスの異常とも言えるユダヤ人に対する偏見であった。

第2章 ヨーロッパ・サッカー界におけるナチス政権のユダヤ人差別の事例
 ユダヤ人選手として、ユリウス・ヒルシュ選手、ギヨルギ・ブラウンシュタイン選手、エディ・ハメル選手の3人の差別事例を取り上げた。
 ユダヤ人クラブとして、FCバイエルン・ミュンヘン、アイントラハト・フランクフルトの2つのクラブチームを取り上げ、各クラブのユダヤ人役員やユダヤ人会員がナチスによって追放される事例を紹介した。

【結論】

 ナチス政権のユダヤ人差別は、ヨーロッパ・サッカー界にも多大な影響を及ぼした。このように、スポーツが政治の犠牲になることはあってはならない。
 また、ユダヤ人差別は現在でもなくなっていない。我々には遠い世界の出来事であるが、グローバル化が進行する現在、ユダヤ人差別について考えていくことは、今日存在する様々な差別を撲滅するためにも有意義であると考える。

【主要参考文献】

1.ゲールハルト・フィッシャー、ウルリッヒ・リントナー(2006)「ナチス第三帝国とサッカー」現代書館
2. 関根政美(1994)「エスニシティの政治社会学」名古屋大学出版会