「靖国神社 遊就館」視察報告書

報告者:有田龍大、石毛良樹、伊藤竜平、森川浩次、吉田紘文、渡邉百(1期生)
視察日:2008年11月20日(金)

はじめに

 靖国神社付属の遊就館(ゆうしゅうかん)には日本の長い歴史の紹介とともに主に第二次大戦で使われた兵器や戦争がらみの器材が多く展示されている。特に歴史紹介は分かり易く凝っていて非常によくできている。ここでは主にその成り立ちを紹介し、その上で展示品を見ていく。

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図1 遊就館本館正面(左)と新館(右)

1.成り立ち
1-1.戦前

 遊就館は幕末維新の新政府軍(官軍)戦没者ゆかりの品を展示する軍事博物館として1882年(明治15年)に靖国神社境内に併設された。館名は中国の古典「荀子」の「遊必就士」(高潔な人に就いて交わり学ぶ)から2文字を取ったものであり、遺品展示を通して我が国の平和に命を捧げた先人達の想いに触れ、大切な何かを学んで欲しいと言う願いが込められている。
 日清戦争や日露戦争を経て1910年(明治43年)には明治天皇の勅令「武器ノ沿革ヲ知ルヘキ物件ヲ蒐集保存シ軍事上ノ参考ニ供スル所トス」(勅令192号)が発布。さらに第一次世界大戦を経て展示資料は増加し、施設も逐次増築されたが1923年(大正12年)の関東大震災で損壊したため、翌年に仮館を建設1932年(昭和7年)に再建された。

1-2.戦後

 戦時中は、陸軍省の貸出しで鹵獲(ろかく)兵器の展示も行われたが、第二次大戦後に遊就館令が廃止され閉館した。
 国家補助を打ち切られた靖国神社は、遊就館の修理を条件に建物および周囲の土地の貸与を表明し、1947年(昭和22年)11月に社屋を米軍に接収された富国生命保険と月額5万円(当時)で賃貸契約が結ばれ、同社の「九段本社」として使用、1961年(昭和36年)に遊就館に隣接する靖国会館の一部を「宝物遺品館」として再開、そして1980年(昭和55年)に富国生命保険が立ち退くにあたり、当時の社長が靖国神社の経済的窮状を財界有力者に訴え、これを契機に「靖国神社奉賛会」が発足した。1985年(昭和60年)7月13日に施設の改修が終わり遊就館として再開、建物の老朽化と展示スペースの不足から創立百三十年記念事業の一環として本館改修と新館増築の工事が行なわれた際に、野外の展資料も館内に収納展示され2002年(平成14年)7月13日に再公開した。
 現在では「戦没者顕彰」と「近代史の真実の明示」を目的に、靖国神社で祭神とされている合祀者の遺品や実際に使われた兵器など約三千点を展示。遺族による遺品提供は今も続き、収蔵品は十万点を突破した。

2.展示室

 展示は時代系列順に古代、近世、明治維新、戊辰戦争、西南戦争、日清戦争、北清事変、日露戦争、満州事変、日中戦争、太平洋戦争関連の資料を展示している。
 順路の初め部屋には実物の小烏丸作りの元帥刀が展示されている。2階には「映像ホール」があり、祭神や近・現代日本に関する記録映画を上映している。さらに遊就館入り口のホールには三菱製零式艦上戦闘機52型(通称ゼロ戦)や、かつてタイ・マレー・ビルマで物資補給に活躍した泰緬鉄道の蒸気機関車や15センチカノン砲、榴弾砲を展示している。

2-1.古代~西南戦争

 前半には有史から江戸時代後半くらいまでに使用された小物や甲冑・刀などの歴史的価値の高い武具が数多く展示されている。
 明治維新以降は銃の普及と西洋風の軍隊方式に則ったため、展示内容は維新志士の品々、新政府の正式採用軍服・銃、戊辰戦争で使われた錦旗などに変わっていく。
 また、時代ごとに歴史を詳細にまとめたパネルがあり、詳しい説明がされている。

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図2 元帥刀(歴代の天皇が元帥に下賜されたもので、平安の御代の「衛府の太刀」を模したものとされている)

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図3 日本の開国時期の展示。中央は坂本竜馬。

2-2.日清~太平洋戦争

 遊就館の中で最も多い割合を占める近代戦争の歴史と資料が展示されている。
 日清・日露戦争における日本軍の歩みや、戦没者の衣服・手記などが数多く展示され戦争の生々しさを垣間見ることができる。日本軍のものだけでなく、日露戦争での鹵獲品やロシア軍の兵装などもある。
 数多くの展示がある近代戦争の中でも最も多くの遺品が残る太平洋戦争では、元帥から一般兵・女子挺身隊までの戦没者の数え切れない程の写真貼られ、軍服や実用品、遺言などがある。多くの武装が並べられていた館内でも、この時代の展示物には備前焼で作られた手榴弾や一回限りの特攻兵器の模型などの特殊なものや、物資の不足による武器の質素さが目立ち、当時の資源不足が深刻だったことが伺える。
 終戦後はA級侵犯と定められた一部将校の自決した際の短刀・辞世の句が書かれた血染めの布や東条英機の眼鏡をはじめとする遺品が展示されている。

3.展示大ホール

実際に使用された兵器やそのレプリカが展示されている。爆撃機「彗星」、戦艦「陸奥」の副砲および実弾、97式中戦車、いわゆる人間魚雷とされる「回天」、ジェットエンジンを搭載した特攻機である「桜花」のレプリカ、空母・戦艦の模型や数々の遺留品が展示されている。

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図4 艦上爆撃機「彗星」

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図5 特攻機「桜花」

4.遊就館基本情報

開館時間

  • 4月~9月 午前9時~午後5時30分
  • 10月~3月 午前9時~午後5時
  • みたままつり期間中(7月13日~16日)は午前9時~午後9時
  • ※入館は閉館30分前まで
  • ※館内の撮影は1階玄関ホール以外原則禁止。
  • 拝観料
  • 大人800円
  • 大学生・高校生500円
  • 小学生・中学生300円
  • 靖国神社崇敬奉賛会会員は無料

参考

  • 遊就館ホームページ http://hge3.niftomepay.com/tompei/Yuusyuukan.htm
  • Wikipedia