「秩父宮記念スポーツ博物館」視察報告書
報告者:諏訪大助(第2期生)・平岡宏基(第2期生)・堀内俊宏(第2期生)
視察日:2009年10月29日(木)
2009年10月29日(木)、東京都新宿区千駄ヶ谷駅近く、国立霞ヶ丘競技場(以下国立競技場)に併設する秩父宮記念スポーツ博物館に見学に行った。
この日は最初に、国立競技場内を見学した。
図1 観客席最上部からの国立競技場
国立競技場は、1958(昭和33)年3月に完成した。当時は、冬になると芝生が枯れてしまっていたが、現在は冬芝の種をまいているので、一年中青々とした芝生が見られる。
日本を代表する競技場として有名だが、観客席に3分の2以上の屋根がないため、FIFA(国際サッカー連盟:Fédération Internationale de Football Association)の定める規定によりW杯などの国際試合は開催することができない。
国立競技場には1928(昭和3)年アムステルダム五輪、三段跳びで日本初の金メダルを獲得した織田幹雄選手の記録と同じ長さ(15.21m)の「織田ポール」が芝生横に立っている。また、選手が試合直前にトイレに行けるように観客席のすぐ下にトイレが設置されている。
競技場の見学が終わり、秩父宮記念スポーツ博物館に入館した。秩父宮スポーツ博物館は、国立競技場完成の翌年1959(昭和34)年に開館された、日本で唯一の総合スポーツ博物館である。この博物館は、戦前戦後を通じてスポーツの振興につくされた秩父宮殿下の功績をたたえようという声も高まっていたため、国立競技場内に誕生した。
秩父宮記念スポーツ博物館では、オリンピックの歴史、日本古来のスポーツ、近代スポーツが入ってきた明治時代から現在までの日本スポーツの歴史を紹介している。
早速館内を見学していくと、後藤ゼミでもお馴染みの近代オリンピックの父、ピエール・ド・クーベルタン男爵の写真が貼られていた。
図2 ピエール・ド・クーベルタン男爵像
クーベルタンは、青年期にイギリスに遊学し、教育にスポーツが取り入れられる事に感動した。当時、彼の祖国フランスはプロシアとの戦争に敗れ、国民は打ちひしがれていたが、彼は、これを救うためにスポーツを通じた青少年の心身の教育が必要だと考え、これがオリンピックの復興運動の原点となった。
図3 東京五輪ゆかりの衣装
また1964年(昭和39)東京五輪で使用された衣装が展示されていた。
図4 1988(平成元)年ソウル大会 鈴木大地(競泳)の金メダル
金メダルがずらりと展示されたフロアがあった。そこには金メダルにも関わらず金色でないメダルがあった。実は国際オリンピック委員会の規定で「金メダルは純度1000分の925以上の純度銅製のメダルの上に金張りまたは金メッキをほどこす」と決められている。それで、メッキの技術や保存の状態によって、表面がはげて、地の銅の色が出てしまう、とのことだった。
図5 東京五輪で使用された表彰台 1位諏訪大助、2位小野田潤二郎、3位鬼塚祐輝
その奥には、1964年(昭和39)東京五輪で使用された表彰台があり実際に乗ることもできた。
館内には、グラススキーやインディアカ、ユニカール、スポーツチャンバラ、3B体操といった珍しい競技の写真や道具の展示もあった。
図6 昔の野球道具
昔の野球の用具も展示されていたグローブおよびプロテクターは今の道具と比べれば簡素な作りだった。
図7 野口選手が使用したシューズ
この写真のシューズは、2004(平成16)年アテネ五輪で金メダルを獲得した野口みずき選手が練習で実際に使用していたモデルと同じものである。この他にも、高橋尚子選手が使用したモデルのシューズも展示されていた。ちなみに、野口みずき選手の歩幅は約148cmのストライド走法で、高橋尚子選手は歩幅約130cmのピッチ走法である。野口選手の身長が150cm、高橋選手の身長が163cmであることからその歩幅の大きさが実感できるであろう。
奥に行くと、戦時中のスポーツが急速に戦時的性格を濃くし、土嚢運搬や手榴弾投げといった「国防競技」が行われたことを示す展示もあった。スポーツを通して国民に戦争を意識、実感させていた時代背景がよくわかった。
また、スキーの歴史を書いた展示もあり、そこには、わが国で初めてスキーが行われたのは1911(明治44)年1月で、レルヒ少佐が新潟県高田連隊の将校に両手で操作する一本杖のオーストリー式スキーを紹介した。しかし、1916(大正4)年ノルウェー式二本杖のスキーが紹介されてからは、一本杖のスキーは姿を消したと説明されていた。
図8 流鏑馬の展示
さらに進むと、日本伝統の流鏑馬に関する展示もあった。流鏑馬は第29代欽明天皇の時、九州豊前宇佐の地において、天下泰平、五穀成就、国民安堵の祈願のために、三個の的を射さしめられたのが起源である。
最後のフロアには走り幅跳びの世界記録などが展示されていた。床にビニールテープで世界記録(8m95cm。マイク・パウエル)、日本記録(8m25cm。森長正樹)等が貼られているもので、実際に記録の偉大さを実感できるものであった。それらを見てこの日の秩父宮スポーツ博物館の見学は終わった。
まとめ
日は、国立競技場の施設に関する情報や秘密をまず知り、次に秩父宮スポーツ博物館での古代オリンピックの説明や、近代オリンピック復興の経緯、普段見ることのできない過去のスポーツに関するグッズや情報を実際の展示によって学ぶことができた。現在自分たちが実際にやっている、見ているスポーツは長い歴史に支えられて成り立っていることを実感した。この経験を今後の卒論作成に生かしていきたい。