「国立競技場スタジアムツアー」視察報告書
報告者:大倉健太郎・横山幸季・野口秋成(第7期生)
視察日:2014年5月2日(金)
1.はじめに
5月2日、「国立競技場スタジアムツアー」に参加した。国立霞ヶ丘陸上競技場(国立競技場)は7月に解体工事が始まる予定で、今回のツアーは「SAYONARA国立競技場プロジェクト」の一環として行われているものである。ゴールデンウィークとはいえ、平日にもかかわらず多くの人が訪れていた。ツアーがある日は400~1000人ほどの人が一日に訪れるそうだ。入場料(1000円)と引き換えにもらえるカードには今年一月からの入場者の通し番号が書いてある。少し早い夏を感じさせる陽が照りつける中ツアーがスタートした。
図1 記念品
図2 ACCREDITATION CARD
1.東京オリンピック優勝者銘盤
競技場正面入り口の上方に設置された花崗岩の銘盤。メインスタジアムに金メダリストの名前を永遠に残すというIOCのきまりに則り、中央に東京オリンピックのマーク、そして左右対称に319人の1964年東京オリンピック金メダリストたちの名前が刻まれている。国立競技場が建て替えられ、2020年東京オリンピック後に新たな銘盤が新国立競技場に設置されるのは確実だが、この1964年の銘盤が新国立競技場に設置されるのかは現在のところ未定である。
2.第三回世界陸上東京優勝者銘盤
正面から代々木門方向に少し歩いたところ、国立競技場のピッチへと続くシャッターの前に1991年に東京で開催された第三回世界陸上の優勝者銘盤が設置されている。なお、世界陸上がアジアで開催されるのはこの1991年大会が初である。この銘板には大会で優勝した選手の名前が刻印されているのだが、女子マラソンのところにのみ銀メダリストである山下佐知子の名前も刻印されている。これは、日本人初の世界陸上での女子のメダリストである山下選手の栄誉をたたえるためである。
図3 東京オリンピック優勝者銘盤
図4 第三回世界陸上東京優勝者銘盤
3.トラック
メインスタンド側のトラック100mを歩くことができた。軽くなら芝生にも触ることができた。ラインに並ぶ姿が夕方の「every」と深夜の「NEWSZERO」で放送された(笑)。
図5 トラック上でスタートの構え
図6 「every」での放送模様
4.織田ポール
国立競技場開設当初から第4コーナー内側に立つポールである。日本人初のオリンピック金メダル獲得という偉業を成し遂げた織田幹夫氏の三段跳び優勝記録15m21cmと同じ長さのポールである。ポールはちょうど100m走のスタート地点付近にあるが、選手がレース前にトラックを横切ることなく用を足すことができるように、地下のトイレへと続く穴が掘られている。女子の世界初の立小便器も国立で初めて設置されたらしい。
図7 グラウンド(左奥が織田ポール)
図8 地下トイレの入口
6.野見宿禰像・勝利の女神像
競技場を見守るように両者の像が飾られている。 相撲の元祖といわれる「野見宿禰(のみのすくね)」とギリシャ神話の「勝利の女神」によって、スポーツのもつ「美と力」を象徴している。 メインスタンドに向かって右側の「勝利の女神像」は、栄光を意味するオリーブとローレルを持っている。
図9 メインスタンド(奥に見えるのが像)
図10 優勝賞金獲得?(左奥が野見宿禰)
6.室内練習場・ロッカールーム
メインスタンド下に室内練習場と6つのロッカールームがある。シンプルなつくりになっている。
図11 ロッカールーム
図12 作戦ボードで戦術を説明する横山
7.聖火台
バックスタンド中央最上段に設置された高さ2.1m・直径2.1m重さ2.6トンの鋳物の炬火台。東京五輪に先駆けて行われた58年のアジア競技大会のために作られた。当初は南側スタンドにあったが、東京オリンピック開催に向けバックスタンドを増築した際に、現在の位置に移設された。
埼玉県川口市の鋳物職人の親子である鈴木万之助さん・文吾さんが制作。文吾さんは2008年に86歳で亡くなるまで毎年、聖火台を磨き続けてきた。このことに感銘を受けたハンマー投げの室伏広治選手が2009年に聖火台磨きのイベントを発案し、それから毎年、錆を防ぐのに効果があるといわれるごま油で磨き続けていることでも知られる。建て替え工事期間中、聖火台は石巻に移転されそこで聖火台磨きは継続されるという。新国立競技場にこの聖火台が設置されるのかは現在不明である。
図13 聖火台
図14 はしゃぐ大倉(ゼミ長)
8.「出陣学徒壮行の地」碑
千駄ヶ谷門のそばに「出陣学徒壮行の地」碑がある。学徒出陣50周年を記念して1993年に設置された。1943年文系の徴兵延期制度が撤廃され多くの学生が在学中に戦地に駆り出された。海軍を象徴する同期の桜ソメイヨシノと陸軍を象徴する萬朶の桜八重桜が植えられている。国立競技場にも暗い時代があったことを忘れてはならない。
図15 出陣学徒出陣の地碑
図16 同期の桜
9.秩父宮記念スポーツ博物館
1959年に開設され、「スポーツ殿下」として親しまれた秩父宮殿下ゆかりの資料や、日本の近代スポーツ発展の歴史、スポーツ芸術、オリンピックの関係資料などが展示されている。2013年5月7日から新国立競技場が完成するまで休館する予定である。
様々な展示の中で一番眼を引いたのは2020東京オリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場のデザインだった。2019年完成予定という新スタジアムは、2013年11月に最終審査結果が発表され、最優秀賞にはイギリスの女性建築家ザハ・ハディド氏が代表を務めるザハ・ハディド アーキテクトの作品が選ばれた。図19は構想をCG化したものだがそのスケールの大きさに驚きを隠せなかった。東京にこのような魅力的な建物ができれば日本のシンボルとしての役割も期待でき、経済効果も相当なものを見込めるのではと感じた。是非とも開会式の場に足を運びたいと思ったが、後藤先生から一般席でもざらに7,8万はすると聞き青ざめた(笑)。
図17 1964年東京大会のメダル
図18 2014年ソチ大会の聖火トーチ
図19 新国立競技場デザイン
おわりに
取り壊される前に国立競技場に実際に入ることができて本当によかった。ツアーが終わり、後藤先生が外苑西通り明治公園前にある「ホープ軒」に連れて行ってくださった。写真がないのが残念。背油入りラーメン美味しかったです、ごちそうさまでした!
参考文献
- 国立競技場パンフレット