日本におけるトップアスリートの
セカンドキャリア制度に関する研究

32組26番 平岡 宏基

【目的】

 トップアスリートとは、一般的にオリンピックや各競技の世界大会などで素晴らしい成績を上げて活躍する人たちのことである。しかし、華々しい成績を残した選手でも必ず通る道が「引退」である。
 本研究では、トップアスリートにとっての「引退」とは何か、日本にはどのような「保障制度」があるのか、また、トップアスリートに対してセカンドキャリア支援活動を行う団体を明らかにする。「引退」を不安視せず、最高のプレーをする為に、また、トップアスリートを目指す若者を育てる為にどうすればよいか、セカンドキャリア支援の実態と問題点を取り上げ、よりよい支援制度を考察していくことを目的とする。

【各章の概要】

第1章 必ず通る道―トップアスリートの引退
 トップアスリートとして輝かしい成績を残しながら、引退後、別の道を歩んでいくことは、決して珍しいことではない。怪我、解雇、年齢などで引退を迎えた者は、苦悩しながら別の道を歩んでいく。また、引退後にスムーズに別の道を歩んで行けるということは少なく、アイデンティティの喪失、経済的な不安などで悩むことは非常に多いのである。

第2章 「その時」に備えて―トップアスリートの社会保障
 日本におけるプロスポーツ選手は、労働組合法と労働基準法の解釈が異なり、「労働者」であるか、「事業者」か、とても曖昧な存在である。また、保障制度が充実している競技は、認知度が高いJリーグなどに限られ、そのJリーグでさえ、保障制度が近年になってようやく充実してきた段階と言える。
 また日本オリンピック委員会が実施した調査によれば、現役トップアスリートのほとんどが、引退後を不安視していることがわかった。しかい現役時には、引退後について考える余裕もなく、孤独を自覚している選手が数多く存在するのである。

【結論】

 トップアスリートにとって引退とは、非常に大きな出来事であるにも関わらず、その保障制度はとても脆弱なものである。我々大衆の注目する部分は「結果」であり、引退について考える機会がほとんどないことは否定できない。日本の国際的競争力を維持するためにも、トップアスリートを目指す若者を育てるためにも、国家レベルでの早急な対策が必要である。

【主要参考文献】

1 A・プティパ他著(田中ウルヴェ京・重野弘三郎訳)「スポーツ選手のためのキャリアプランニング」(大修館書店、2005年)
2 吉田章他著「トップアスリートのセカンドキャリア構築に関する検討(第1報)」『筑波大学体育科学系紀要』(29巻:PP87-95,2006年)