剣道の歴史とルールの変遷

5組15番 坂梨 憲二

【序論】

 日本の風土の中で培われてきた剣道は、今日では国内外で老若男女から親しまれる文化として発展している。剣道愛好者にしてみれば、修行のため、健康保持のため、試合を楽しむため、人との交流のためと言った多様な価値観によって実戦されている。私も、幼い頃から剣道をやっており、現在では体育会剣道部に所属している。私にとって一番身近である剣道のルールの移り変わりを知るため、このテーマを定めた。いくら老若男女から親しまれていても、剣道の知名度は野球やサッカーに比べるとまだまだ低い。また、ルールに関しては、剣道に携わっていないと知る機会はめったにないだろう。剣道を知らない人に対して、少しでも剣道の精神、技術、武士道を知ってもらうために歴史やルールの移り変わり、精神という観点から本研究を進める。そして、剣道のルーツである「剣術」が現在の「スポーツ剣道」に変化していった過程を明らかにすると共に、「剣道」のもつ意義の変化、それに対して変らぬ「精神」のありかたを検証していく。また、剣道のスポーツ化につれて制定された規則の変遷について調べる。

【各章の概要】

第1章 剣道の歴史
 第1章では、歴史を見ていくことで、剣道や道具の誕生、発展を理解することができる。また、「剣術」から「スポーツ剣道」へと変化していく過程、剣道規則の変遷についても理解することができる。
第2章 剣道のルール
 第2章では、剣道規則・審判規則、剣道試合者要領から剣道のルールを見ていった。試合場、竹刀の基準、打突部位、禁止事項、審判などの細かいルールを知ることができる。

【結論】

 江戸時代末期の剣道の試合は、自己の技量を検証するために行われており、試合よりも演武という観念が強く働いていた。しかし、戦後の剣道では試合数の増加や勝敗へのこだわりが増し、自己の修業のための剣道ではなく、勝敗を楽しむための剣道へと移り変わっていった。その中で、「剣道試合・審判規則、剣道試合・審判細則」が制定され、剣道のスポーツ化が進んでいった。剣道は体格や体力が、競技者としての優位性を大きく支配するスポーツとは違い、「心身一如」が強く求められる。また、技そのものを構成する間・呼吸・気などの容易に会得しがたい要素が存在する。それ故に、短期間で習得することは難しく、「生涯修行」「生涯向上」の姿勢を維持することが重要となる。また、現代剣道の大命題としてあげられる「人間形成の道」は、一時的な取り組みによって完了するものではない。「五輪書」において、宮本武蔵が「千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を練とす」と説いているように、剣の道をひたすら追い求める「求道者」の姿勢を貫き通してこそ、技と心は限りなく鍛え練られるものであると考える。
 今回、剣道が誕生したルーツから、戦争に翻弄された近代、敗戦による剣道の禁止と復活、剣道のスポーツ化が進む現代までの歴史を辿ってみて、自己の修練のための剣道の在り方と、スポーツ化が進み勝敗にこだわるようになった現代の剣道の在り方との矛盾を再確認させられた。

【主要参考文献】

大塚忠義『日本剣道の歴史』窓社,1995年
酒井利信『日本剣道の歴史』スキージャーナル株式会社,2010年
日本武道学会剣道専門分科会『剣道を知る事典』東京堂出版,2009年