社会人野球の歴史

経済学科 31組6番 稲垣 海聖

【序論(目的)】

 私が現在やっている社会人野球は日本で古くから発展しており、大企業を中心にチームを立ち上げ全体を盛り上げてきた。しかし、近年は世界的な不況に伴い規模が縮小している。強豪チームであっても経営難から廃部に追い込まれるチームがある。よって、本論文では社会人野球の起源や歴史、不況に伴う廃部の経緯や現代の企業登録チームの存在意義などを考察したいと考えた。

【各章の概要】

第1章 社会人野球{社会人野球とはあくまでアマチュア野球の内における社会人(並びに学生)が行う硬式野球に以後限定する。}について
 第1章では社会人野球の起源や歴史と共に、企業登録チームとクラブチームの形態や環境の違いなどを考察した。社会人野球の起源は、明治11年に鉄道技師の平岡煕ら新橋駅の鉄道関係者によって、「新橋アスレチック倶楽部」を創設したことから始まった。しかし実質的には、第一次世界大戦後に日本が好景気に転じた大正5~6年に会社が続々とチームを創設したことに始まる。

第2章 社会人野球と日本経済の関係について
 第2章では、都市対抗野球大会の起源や歴史、日産自動車野球部廃部とともに、時代の変化に伴う企業登録チームの存在意義について考察した。近年、企業登録チームの存在意義が薄れてきている原因は、日本企業が外国の習慣を取り入れ始めていることにある。以前までの多くの日本企業は終身雇用を大原則とし、従業員の家族も温かくケアをするというのが特徴であった。社宅や厚生施設の充実度が企業評価の重要な要素であり、社内運動会や社員旅行など家族も参加できるイベントが仕事の活力を生んでいた。よって、夏休みに開催される都市対抗野球大会に出場する野球部を従業員は家族で応援することができ、野球部はなくてはならない存在であった。ところが、近年の時代の流れとともに終身雇用という概念が絶対的なものではなくなり、従業員もプライベートな面までのケアを企業に求めなくなりつつある。これにより、社宅や厚生施設の有無は企業を評価する上で重要な要素ではなくなり、社内イベントへの参加率も年々減少傾向にある。

【結論】

 近年の世界的不況は、たとえ大企業であっても打撃を受け、逃れることは容易ではない。しかし、廃部の原因は一概に現代の不況による業績悪化によるもののみではない。時代の変化に伴い、野球部の存在意義が薄れているということも原因の1つである。野球部を社員への娯楽提供でなく、目に見える利益の手段と考えてしまうと、年間数億円も維持費がかかる野球部を持つことへの理解は得づらい。だが、今春ドラマ化された池井戸潤の「ルーズヴェルト・ゲーム」のように、野球部の応援を通じ、社員や家族を1つにするというような大きな存在にもなり得る。

【主要参考文献】

「都市対抗野球大会60年史」日本野球連盟 毎日新聞社 1990年1月
「都市対抗に明日はあるか」横尾弘一 ダイヤモンド社 2009年8月
「野球を歩く・日本野球の歴史探訪」小関順二 草思社 2013年11月
全日本野球協会HP 公益財団法人日本野球連盟HP NTT東日本野球部HP 市民球団新日鐵住金かずさマジック野球部HP NOMOベースボールクラブHP つくばクラブHP 信越硬式野球クラブHP 松山フェニックスHP